『第二戦線』よりも優先させるもの

ポスト『イスラム国』時代へ布石として漁夫の利を狙う人たち。


サウジがイエメンに軍事介入:新たな中東戦争の恐れ | JBpress(日本ビジネスプレス)
もちろん完全解決を見たわけではまったくない『イスラム国』問題も、しかしその勢力圏のピークアウトを迎えているのは多くの識者が指摘しているところであるわけで。そうなると問題はその『イスラム国』後の世界となるのでしょう。結局、今回のお話もそうした文脈の下にあるのかなぁと。
火事場泥棒というか漁夫の利というか。まぁもちろんこうした手法は、タイミングを間違えるとその力の空白に勢力圏拡大を許してしまうデメリットもあるわけですけど。
世界は力の空白を嫌う - maukitiの日記
先日のお話でも少し書きましたけど、むしろサウジアラビアを始めとするスンニ派な諸国にとって『イスラム国』とシーア派なイランが潰しあってくれればくれるほど「その後」の世界では大きな優位性を得ることができるわけですよね。「今日の敵」と「明日の敵」が長く争ってくれればくれるほど、それらの敵は消耗し自分たちが相対的優位に立てる。伝統的英国手法。その有名事例が第二次大戦後半、特に独ソ戦が始まって以降はまったく手を抜きまくった米英軍でもあったわけで。スターリンには対ドイツ支援=南側からの第二戦線を約束しておきながら、結局はソ連の冬将軍がドイツに大勝利するまでノルマンディーは始まらなかった。米英軍は対ナチス戦線において独ソ戦という主戦場の裏口から入っただけだった。あの時の禍根が今のプーチンさんの戦勝国の大きな正統性の柱になっているのは愉快なお話ではあります。

「イランが戦火に巻き込まれる危険性もあるが、イランが戦闘から多くのものを得るとは思えない。イランにしてみれば、イエメンは遠く離れており、優先事項ではない。彼らはイラク国内の本当の脅威やISISの脅威から注意をそらしたくないと思っている」

サウジがイエメンに軍事介入:新たな中東戦争の恐れ | JBpress(日本ビジネスプレス)

その意味で対『イスラム国』において、スンニ派連合が第二戦線ではなく、別の形でその軍事力を用いようとしているのは、直接ヨーロッパではなく北アフリカから攻めた米英軍っぽくて、まぁとっても大戦略な風景で他人事ながら面白いと思います。
アラブ連盟が合同軍創設で合意、イエメン「フーシ派」に撤退要求| ワールド| Reuters
イスラム国』の後、中東にどのような絵を描くのか。イランは核合意を目指しつつイラクからシリアに至る新たな力の空白を埋めようとしているし、対するスンニ派諸国――というかサウジとエジプトはこの機を使って、自国と周辺国の足場を固めようとしている。
イスラエル総選挙:恐怖の勝利 | JBpress(日本ビジネスプレス)
いやぁホント大劇変ですよね。そりゃお隣のイスラエルさんちも「恐怖が勝利」しちゃいますわ。


がんばれ中東とかだいたいそのへん。