真に「現代版スイス」の名にふさわしいかもしれない国家

日本も素晴らしき中立なスイスを見習おう派が少なくないので、北朝鮮を見習おうっていう人も少なくないかもしれないね。
「水爆に全世界が震撼」朝鮮総連トップが核実験を称賛 | DailyNK Japan(デイリーNKジャパン)
実際居ないってこともないわけだし。


日米韓は「北朝鮮を追い詰めているフリ」など止めるべきだ | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
うーん、まぁ、そうね。「追い詰めているフリ」というのには概ね同意するしかない指摘ではありますよね。
――ただまぁ身も蓋もない話をすれば、国家の最重要の役割の一つは今も昔も「国民の安全を確保する」ことでもあるわけで。ぶっちゃけて正直に言えるわけない。事実上何もできない、なんて正直に言えない。故に誰もが建前として「北朝鮮問題はコントロールされている」と判を押したように述べるのでした。北朝鮮は危険だけれども、私たち政府はきちんと対応しているので安心してください、なんて。


ただこのお話が面白いのは、それは何も周辺各国政府の「無能さ」から来ているわけではないのが、あるいは救えない所でもあるわけで。

 この疑問に対する答えは簡単だ。これまでも、国連制裁が不十分だったわけではない。おそらく国連制裁には、北朝鮮に核開発を断念させるだけの力がないのだ。

 そもそも何故、北朝鮮は国連制裁をものともせずに核開発を続けられるのか。その理由のひとつは、北朝鮮には豊富なウラン資源があるからだ。核物質を輸入する必要がないから、国連制裁では遮断できない。

日米韓は「北朝鮮を追い詰めているフリ」など止めるべきだ | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

実際他に何ができるかっていうとお察しなんですよね。それこそ「効果の薄い制裁」という今の北朝鮮の構図に近いモノと言えば、2003年イラク戦争前の経済制裁を巡る議論があったりしたわけですけど、しかしあの時の代替の選択肢と言えばそりゃもうご存知の通り『戦争』でもあったわけで。戦争をするくらいなら放置していた方がマシだ、という方針はおそらく日本だけでなく周辺関係国全てにおいても大多数の賛成を得られるでしょう。
「アイツらを攻めてもデメリットが大きいから無視しよう」
ところがまさにそんな反応というのは実際北朝鮮の思惑の通りでもあるわけで。もちろん今回の自称水爆騒動を受けて北朝鮮問題の重要性が上がったことは間違いない。でもだからといって、今回の件で私たちの側の対応方針そのものまで影響を与えるような変化かというとやっぱりそうではないでしょう。
むしろ更に「放置する」インセンティブが高まったと言えるかもしれない。
ナチスドイツに全力で抵抗することを表明して、見事に中立を守ったスイスみたいな北朝鮮。そしてまた彼らの放置されっぷりは、ほとんどそのまま核抑止力の証明でもある。
あの時のスイスの抵抗を褒めるならば、北朝鮮のそれもほとんど同様の「合理性の極致」だよねぇ。



きっと、まだ後しばらくは「見ないフリ」を続けていくのでしょう。彼らは徹底的に金王朝打倒デメリットを極大化することに心血を注いでいる。対独有事となれば町を放棄し、交通網を破壊し、国民皆兵で山岳ゲリラ戦を本気で覚悟していたスイスのような北朝鮮。実際、ヒトラーの時もそうだったように、タンネンバウム作戦*1は日韓米中どこを見てもありそうにない。
おそらく、少なくとも私たち日本人の大多数にとっても、それは幸福なことなのでしょう。我々は北朝鮮を追いつめていて政権自壊も時間の問題である。それは優しいウソであるし、同時にまったく根拠のない話というわけでも、ないことはないのだし。



それは現地北朝鮮住民にとってはまだしばらく自由とはまったく縁のない世界が続くことを意味しているんですけど。彼らの生命や自由を重視する立場からすればまったく不満なことでしょうけど、しかしあんまり本邦では大きな声ではない。
まぁ仕方ないよね。どれだけ建前を積み重ねて見ても、実際の振る舞いが証明する本音とは「人命の重さは国境が左右する」のだし。
それこそ私たちが守るべき人権とは国内の人権であり、他国のそれではないのだから。


みなさんはいかがお考えでしょうか?