ハロー後知恵

「貴方は自分でもう気付いていることに、まだ気付いていないだけなのだ!」どーん!


350年前の「相手に考えを変えさせる方法」が効果的と現代の心理学者が支持 - GIGAZINE
当日記でも『パスカルの賭け』は定番ネタだし折角なので。

マークマン教授は「誰かの考えを変えるため最初にやるべきことは、自らの防御を低くして、相手がすでに確立した意見に固執することを防ぐことです」「もし私がすぐに『あなたは間違っている』と伝えたなら、あなたは私に協力する気を失うでしょう」と話しています。その一方でマークマン教授は、「もし私が『ああなるほど、あなたは本当にいいところを突いていますね。私が思うに、それは重要な問題だと思います』と言い始めたなら、あなたは同意されたお返しに、「協力したい」という理由を持っています。協力に応じることで、自身の懸念を自分の口から話すチャンスを得たのです」と説明しています。

350年前の「相手に考えを変えさせる方法」が効果的と現代の心理学者が支持 - GIGAZINE

うーん、まぁ、そうね。相手を説得しようとする際の「心構え」としては正しいですよね。否定から入ってはいけない。円滑な人間関係の為の初歩的なお話ではありますけど。
――いやまぁ世の中には、そもそもそれすら出来ていない『この正義は絶対不変の真理である故に、我のイデオロギーにひれ伏すがよい!』的に上から目線な態度で相手(更には見知らぬ相手にも)の態度変更を迫る人が特にネット上にはまぁ驚くほどいっぱい居るので、その前提条件をもう一度学ぶという意味では適切かもしれないね。


ともあれ、やっぱりこれは対人関係の基礎中の基礎であり、そうすれば簡単に相手を説得・論破できるかというとそうでもありませんよね。あくまでスタートラインに立っただけ。やっぱり問題は「自身の懸念を自分の口から話すチャンス」の後でしょう。
問題なのは、その後、一体何を話せば相手の態度を変えられるのか?
この辺は心理学の主要テーマの一つでもあって、まぁ色々あったりするんですよね。多かれ少なかれ誰しも相手を説伏してやりたいという気持ちがある一方で、自分の意見が間違っていることを率直に認めるには心理的なハードルがあるわけで。政治的動物である人間の宿業といってもいいかもしれない。

人々は概して他人に言い聞かされたことより、自分で見つけた理由に納得するものだ

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むしろこの言葉から今回のネタを説明するならば、「後知恵効果(バイアス)」辺りを持ち出すべきじゃないかなぁと。私たち人間は結果を見て自身の意見を決めている。賢い私たちの脳は、都合の悪い事実=過去間違っていた自分の考えを、後になって過去の意見を記憶改変し無視あるいは曲解することができる。「当時から薄々そう思っていたんだよ!」なんて。なのでそうなるように相手の間違いを相手自身に気付かせるように会話を誘導してあげる。
その上で、以前の結論を変えさせる――といっても慌ててここで直接それを指摘するのはイケマセン。人間様のプライドはとってもセンシティブなので、ドヤ顔で指摘するのではなく「実は貴方も薄々思っていたんじゃない?」とばかりに、自分が指摘するのではなく相手が自分で『修正』した気持ちになるように、結論へと優しく導いてあげるのです。一つのさえたやり方として。


重要なのは、いかにして相手に「都合よく勘違いさせるか」という点である、だと詐欺の論理じゃなかった現代の心理学は教えてくれるのでした。いやぁとっても勉強になるよね。
個人的には、こうして(賢く)相手の考えや態度を変えることのコストはひたすら膨大で糞メンドクサイと常々思っているので、がんばる人を見るととても生暖かい気持ちにはなります。いやまぁ最初に書いたようにがんばってない人ばっかりでもあるんですけど。


がんばれ相手を説得論破したい人たち。