現代中国の「リベラルな国際秩序」への二重の挑戦

中身という意味でも、維持という意味でも。



秩序をつくるのは誰? : 地政学を英国で学んだ
面白いお話。

この彼の議論のエッセンスだけまとめると、
「リベラルな国際秩序という言葉はそもそも矛盾しており、危険だ」
ということです。
いやいや、どこが矛盾しているんだ、と普通だったら感じるところですが、彼の言いたいことは、
アメリカがつくったとされる戦後のリベラルな国際秩序は、そもそもリベラルに形成・維持されたわけではない」
ということです。
つまり「秩序」(order)をつくって維持する行為というのは、そもそもリベラルな姿勢では絶対に無理、ということですね。

秩序をつくるのは誰? : 地政学を英国で学んだ

概ねその通りだと頷くしかないお話かなあ。それこそ一部の日本人な私たちにも多い『国連』信仰も、あれだって結局はリベラルな大義実現というよりはむしろ、それはもうただただ大国間の利害調整の為に存在し(改革が事実上失敗したこともあって)続けているわけだし。
国際社会の致命的問題は拒否権を使って見ない事にしようぜ! というすばらしき解決策。それでも、以前の国際連盟と同様に、何も無いよりはずっとマシではあるんですが。
本邦でも人権委員会についてのアレコレが言われるようになってきましたけども、そうした構図が大前提にある国連を単純にリベラルな組織と見るのはやっぱり上記でも指摘されてるように矛盾であり、(解っているならば)欺瞞だよね。




ということで、個人的にはこの国際社会における主流派としての「リベラルさ」を支えてきたモノこそ冷戦期を通じて西側世界が証明した「豊かさ」であるとは思うんですよね。
リベラルな自由主義が私たちのミクロな社会に根付かせたのも商業の発展があったように、アメリカという傲慢な帝国主義的リーダーがありながらもそれが「リベラルな国際秩序」として受け入れられてきた要因として。
西側先進国の全てで繰り返されてきた、日々の生活に豊かさがあれば人びとはよりリベラルとなり、引いてはその外交政策もリベラル志向へと近づいていく。
経済成長が都市の市民階級を膨らませ、その彼らが一部の運動家に過ぎなかった自由主義的運動を広く支持することで主流派となっていく。治安という意味でもそうだし、あるいは環境保護という意味でも。
豊かさはすべてを解決する。クズネッツ曲線を讃えよ!
つまり自由主義は経済成長とともにやってくる。
西側につけば君たちもお金持ちになれるぞ!(自由主義も一緒にね!)
もちろん望んだ国すべてがそうなれたわけでは絶対にないものの、しかし金持ちになって国のほとんど全てがそうしてきたのも間違いない事実だったわけですよ。元々失敗事例こそ多かったものの、しかしソ連が結局崩壊して冷戦が終わったように明確な反例があったわけでもなかった。


ところが21世紀の中国という例外が生まれてしまった。


経済発展と、しばしば勢いにまかせてはじまってしまう民主化(それに伴う政治的混乱ひいては革命)を絶対に阻止することを至上命題にしている中国共産党は、まさに上記経済発展と自由主義到来の失敗事例を考えれば合理的ですらあります。おそらく、他の国々は内心で解っていてもそれ実行できなかったのだから。
しかし中国はそうではない。
経済発展を実現し、その後にオマケでやってくる自由主義的価値観も一緒にどうぞと強要する西側圧力をものともせずにはね返す姿は、良くも悪くも多くの国々の背を押すことになるんじゃないかな。
そしてひいては「リベラルな国際秩序」の支持も……。


だからやっぱり現代中国の成功と台頭というのは、リベラルな国際秩序への二重の意味で挑戦になっていると思うんですよね。
単純に既存のそうしたアメリカ主導の国際秩序への挑戦という意味でも、
そしてそれを維持してきた自由主義と経済発展が一緒にやってくるはずだという確信という意味でも。


「リベラルな国際秩序」への中国の二重の挑戦。
それがどう転ぶかはともかく、しかしこの挑戦が21世紀歴史=国際関係を大きく動かすイベントであることは間違いない。未来の社会の教科書に載るレベルには。
いやあ一体どうなるか今からwktkが止まりません。


みなさんはいかがお考えでしょうか?