みなさんはいかがお考えでしょうか?
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大坂なおみさん、「スポーツに政治を持ち込むな」ツイートに痛快な反論 『これは人権の問題です』 | ハフポスト
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ということで前回通常日記でも少し言及した、大坂なおみさんの勇気ある発言がもたらす変化についての、適当日記。
黒人男性のジョージ・フロイドさんが死亡した事件を受け、テニス選手の大坂なおみさんがTwitterなどで人種差別に抗議する発信を続けている。芸能人やアスリートの政治的な発言には批判が起きることもあるが、大坂さんは「アスリートは政治に関与してはいけないと言われることが嫌いです。これは人権の問題です」とツイートし、反響を呼んでいる。
大坂なおみさん、「スポーツに政治を持ち込むな」ツイートに痛快な反論 『これは人権の問題です』 | ハフポスト
人権という概念こそが人類社会を進歩させると信じている(自称)リベラルな僕としても、概ね同意できるところではあります。
――しかし、一方で、ではスポーツ大会でそれを表明することにも無条件に賛成するかと聞かれると……、まったく無責任な第三者としてはあまり迂闊なことは言えないよなあと尻込みしてしまいます。
だって、もし仮に今回の大坂なおみさんの「Black Lives Matter」表明に賛同するとなると、他の政治的主張に関してもセーフかアウトか、の判断を迫られることになってしまうから。
それが一直線にスポーツ大会の存続の危機に繋がるまでは言いませんが、営利を目的に興業を行う人たちやスポンサーたちにとってあまり歓迎すべき事態ではないのは間違いないでしょう。
なのでまったく第三者の立場から「いいぞもっと言え!」「次は『私も台湾人だ』ってマスクを着けようぜ!」とは無責任に煽る事はできないかなあ。
いやまあ世界がもっとカオスになってほしいと望む混乱ラバーな人たちがそれを望むという構図はまったく理解できるし、僕自身が少なからずそう思っていること否定できませんけども。希望は戦争!
もし今回のように「黒人の人権を守れ!」が許されるならば、
「ウイグル人たちの人権を守れ!」とスポーツ大会で言う事も許されるの?
この大阪さんの『勇気ある発言』の後ろには――もちろんそのことが彼女個人の責任に帰するわけでは絶対にない――世界中に無数にあふれている『人権蹂躙に関する政治的主張』の是非について、我々の態度が問われることになる。
その意味で、確かに、勇気ある彼女は世界を変えようとしている。
彼女の勇気ある発言によって変わりアップデートされるかもしれないこれからの世界。
ならばスポーツ大会で「許される」「許されない」政治的主張のラインなのはどこなのか? について我々が考えなければいけないのは不可避だと思うんですよね。
その複雑に絡み合った、ダブルスタンダードと恣意性の罠から私たちは逃れることはできるだろうか?
――というのが前回日記でも少し書いた「言葉にできないもんにょり感」なのだと自分では思ってます。
以下、実例を念頭に置いた上で、そのラインついての思考実験。
- トランプ氏、デモに揺れるケノーシャを訪問 破壊行為は「国内テロ」 - BBCニュース
- 抗議デモによる被害者に寄り添おうと、トランプ政権側の政治的メッセージでもある「破壊行為は国内テロ」というメッセージを別のプロテニスプレイヤーが言う事は、大坂さんと同じように許されるだろうか?
- 周庭氏逮捕、日経掲載広告が証拠 - ロイター
- 香港国安法違反事件、周庭氏が出頭 :日本経済新聞
- 周庭さんが逮捕される時にその解放を求める主張を、中国系のアメリカ人たちがテニスの大会を通じて表明しても許されるの?
- 「逮捕は時間の問題」「抗議運動、続けていく自信はある」香港の民主活動家・黄之鋒氏 覚悟を語る - 毎日新聞
- 世界的にはもっと知名度の高い香港民主活動家の中心人物である、黄之鋒さんの逮捕への反対を表明することは?
- 中国政府「外国勢力との結託」について見解(日本テレビ系(NNN)) - Yahoo!ニュース
- あるいはまったく逆に、中国政府の公式のポジションでもある、外国勢力からの支援を背景にした香港デモの鎮圧を支持するという「香港警察を支持する!」というマスクをしてテニスの大会に参加する事は許されるの?
- 「私は台湾人」 チェコ上院議長の演説に立法院喝采 - 産経ニュース
- チェコ上院議長、台湾を初訪問 背景に中国への反発:朝日新聞デジタル
- 「今はまだ」直接な人権問題にまでは繋がっていないものの、中国からの圧力によって(WHOへの参加拒否など)間接的な不利益を被っている台湾問題について、スポーツ選手が政治的主張を述べることについては?
別に「黒人の人権」と「それ以外の世界の人権問題」と比較して、どちらがどれだけ重要か、とか言うつもりはないんですよ。
今回の大坂さんがそうであるように、その重要性は当事者であるか否かこそが当人の行動するインセンティブの強さとなるのは間違いないから。
ただ、どちらにしてもこれまであった『暗黙の禁止』を乗り越えて政治的メッセージの発信を許すという事は、それ以外の政治的主張の容認への道を開くことになる。
その意味では、従来概ね一律禁止されてきた「スポーツで政治的主張はよろしくない」という暗黙の了解には、一定の合理性があったわけですよね。
何しろ、しばしばポジショントークとして悪用される政治的メッセージを全て容認するわけにはいかない以上――それを容認すれば上記のような中国やロシアというだけでなく、アベ()やトランプ()を支持するメッセージについても公平に判断しなければならなくなる――どこかで『線』を引かねばらならないのだから。
――でも、一体、誰が、どういう基準で、スポーツで許される政治的メッセージの是非を決めることになるの?
浅学な僕にはまったく想像もつきません。
いやまぁ「私も台湾人!」というマスクや、「香港警察を支持する!」「アベはレイプ犯を庇っている!」とかいうマスクを着けてスポーツ大会出る選手たちが一般的になったら、それはそれでと~ってもカオスな世界が到来するのは間違いないので、やっぱり無関係な第三者としてはいいぞもっとやれとwktkする内心は否定できないんですが。
でも主催者側としてはホントものすごい厄介で面倒な問題を抱えることになるよね。
だからもし今後彼らが禁止させようとしてもあんまり責められないとは個人的に思うんです。だって自分でもその基準を判断できないんだから、彼らにどうにかしろなんてとても言えない。
ということで、今回の大坂さんの勇気ある発言が世論として概ね容認されつつあることを前提に、スポーツ大会で「許される」「許されない」政治的主張のラインについて。
みなさんはいかがお考えでしょうか?