この世の現代政治の失敗すべてをそこに置いてきた

民主主義、独裁、社会主義、革命、メディア統制、石油国家etcetc……。


ヴェネズエラ国会議長が「暫定大統領」の就任宣言 トランプ米大統領は承認 - BBCニュース
ヴェネズエラ国民、さらに大量脱出 社会混乱悪化で - BBCニュース
大騒動のベネズエラであります。
現代世界における『飢饉』発生パターンの典型例 - maukitiの日記
ベネズエラは以前も少し日記ネタにしたお話ではありますが、これまで通り国内だけで――あるいはせいぜい周辺の中南米諸国で――その地獄が完結しているならばこれまで通り無視できていたのにね。ところが政治の失敗はやり過ぎてしまったのか、いよいよ国際社会で無視できる範囲を越えるほどに混沌が広まりつつある。
世界中の左翼の希望であった地上の楽園な国がまた一つ消えるよ。

アメリカや南米諸国を中心に約20カ国がフアン・グアイド国会議長を暫定大統領として承認する一方、マドゥロ政権はクーデターだと反発し、アメリカとの断交を発表した。これに対し米政府は、外交官への威圧は容認しないと反発している。

こうした混乱の中、国内ではハイパーインフレと生活必需品の不足で、人道危機が続く。2014年以来、約300万人もの住民が国外に逃れている上に、今回の政情不安でさらに数千人が隣国コロンビアなどに脱出した。

ヴェネズエラ国民、さらに大量脱出 社会混乱悪化で - BBCニュース

ともあれ、もちろん当事者としてはまったく笑えないでしょうけども、でもまあ現代政治学における床屋談義ネタとしての「ベネズエラ」、bbc表記では「ヴェネズエラ」という国家はまぁ見ていて面白い国なんですよね。とりあえずは民主主義政治が機能していた1998年から2019年までの、ここ20年の歩みは失敗の歴史といっても過言ではない。
ベネズエラの自殺 ―― 南米の優等生から破綻国家への道 | FOREIGN AFFAIRS JAPAN
この世のすべての政治的失敗がそこにある、ようにすら見えてしまう。


民主主義政治の失敗として選挙によって独裁者を選び*1
石油国家としてその石油収入の運用・価格下落リスクの回避に失敗し*2
社会主義政策*3として統制経済を試みるも失敗し、
共産主義革命に傾倒し外交関係の構築にも失敗し*4
そして、今私たちが目にしているようにいよいよ独裁政権の維持存続としてすら失敗しようとしている。


わざとやっているのかな? という位に失敗事例のオンパレード。


ちなみに、昨今では独裁国家を超える範囲で民主主義国家にまでも広まりつつある『フェイクニュース規制(を建前にしたメディア統制)』ではありますが、こちらもベネズエラは先駆者でもあるんですよね。2000年の再選時にチャベスさんは、「誤ったニュース」を流したり「欺瞞のために真相の一部を切り取って」報道したメディアを罰するようにメディア統制していたのでした。
トランプさん周りで起きている現代社会の出来事を考えると先見の明がある。個人的に特に面白いのは「欺瞞のために真相の一部を切り取って」という部分。激しく同意してしまう人が本邦にもいっぱいいそう。


まるでこの世の現代政治の失敗事例のすべてをそこに置いてきた、ように見えるベネズエラ
いやあ神様ってザンコクだよね。名前の通りエルサルバドルあたりにいいとこ全部とられちゃったのかな?(むしろこっちの方が地獄)
救いがあるのか、あるいはだからこそ救えないのか、原油価格下落を除けばほとんど丸々人災なんですけど。


がんばれベネズエラ

*1:まさにこれこそ『民主主義の死に方』でレビツキーが言った典型例でもある。

*2:民営化でそこそこ上手くいっていたはずのベネズエラの石油事業の国営化とその顛末こそ、失敗した石油国家の典型例でもある。

*3:21世紀の社会主義 - Wikipedia

*4:(石油のパワーを背景として)ボリバル主義革命の輸出によって中南米の制覇すら夢見ていた。