再び「悪の帝国」「ならず者国家」が真面目に叫ばれる寒い時代へ

一部の人たちにとっては、悪を悪だと断じることができる解りやすい時代にはなったのかもしれないね。







ミャンマー国軍が100人以上を殺害と 国軍記念日のデモで - BBCニュース
ミャンマー治安部隊がデモ参加者100人超殺害、クーデター後最悪 | ロイター
自衛隊や米欧軍トップが非難声明 ミャンマー国軍のデモ弾圧:時事ドットコム
葬列に発砲・遺体を引きずる兵士…国軍の暴力映像に非難:朝日新聞デジタル
ということで更にステージが進んでしまったミャンマー情勢であります。

 クーデターで権力を握ったミャンマー国軍は、抗議する市民らに容赦なく銃口を向け続けている。自らの存在感を軍事パレードなどで内外に誇示した「国軍記念日」の27日も弾圧をエスカレートさせ、100人を超える犠牲者が出た。SNS上には、治安部隊の残虐な行為を撮影した映像が拡散。国際社会からは厳しい非難の声が上がっている。

葬列に発砲・遺体を引きずる兵士…国軍の暴力映像に非難:朝日新聞デジタル

いやあ、現代においてここまであからさまなクーデターと、その後のデモ弾圧というのを目の当たりにするとはちょっと思わなかったよねえ。
それこそ「歴史が終わっている」はずの現代世界では、絵に描いたようなあからさまな悪の独裁を見ることができるのはせいぜい北朝鮮くらいだったはずなのに。
ところが韜晦を止めてしまった中国を筆頭に、ロシアのクリミアでの振る舞いやら、今回のミャンマーでの光景のように解りやすく「悪」という存在を目の当たりにすることになっている。


EU、天安門事件以来の対中制裁へ ウイグル族人権侵害で: 日本経済新聞
先日の通常日記でも言及したEUの対中制裁に、「天安門以来」というフレーズが用いられているのがとても象徴的だよね。
これまでは――(冷戦も終わったのにと)子ブッシュ政権が『9・11』以後見せていたような――勧善懲悪な世界は時代遅れだと笑っていたはずが、あれから20年経って冷戦時代のような空気感がよみがえりつつある。
子ブッシュ政権に時代が追いついてきたな!


勧善懲悪な世界がふたたび。
善と悪がわかりやすい世界になって、ちょっとは生きやすい世界になるのかもしれないね。


米中外相会談で厳しい応酬 バイデン米政権になって初の米中高官級協議 - BBCニュース
ただ、ここで面白いというか、皮肉というか、ジレンマがあって愉快なのは、そうやって解りやすい世界に入り込みつつある(もちろん『善』の方に居ると思っている)私たちではあるんですが、一方で「懲悪」という文字が証明しているように、つまるところ「悪」に対して行動を求められる世界でもある点でしょう。

【ワシントン時事】自衛隊や米国、韓国、英国、オーストラリア軍など計12カ国の制服組トップは27日、ミャンマー国軍によるデモ参加者の弾圧について、「丸腰の市民に殺傷力の高い武器を使用したことを非難する」と共同声明を発表した。

自衛隊や米欧軍トップが非難声明 ミャンマー国軍のデモ弾圧:時事ドットコム

軍による虐殺に対して、私たちはどのような行動に出るべきなのだろうか?
自国政府が温い対応しかしていないように見えた時、普遍的人権を信じている私たち有権者は、より強い行動を採るべきだと政府に要求するべきなのだろうか?




しかしそれではレーガンの悪の帝国演説のような世界観一直線であります。

全体主義の闇の中に生きる人々すべての救済のために祈りましょう。彼らが神を知る歓びを発見しますように。ですが、それまでは、彼らが[全体主義]国家の優越性を説き、個々人に対するその全能性を宣言し、最終的にはそれが地上の民族全てを支配することを予言する限りは、現代世界の悪の中心であることを理解しておきましょう。(中略)ですから、皆さんが核兵器凍結を議論するときには、自分たちが全てを超越していると楽しそうに宣言して、[米ソ]どちらの側も同じくらい間違っているなどと高慢にも決めつけないように気をつけてください。そして、歴史的事実と悪の帝国の好戦的衝動を無視し、軍備競争は単に大きな誤解の産物であるなどと呼ぶことで、正と邪、善と悪の闘いから身を引くような誘惑に駆られないようにしてください[1]。

悪の帝国 - Wikipedia

直接戦争はしないにしても、軍備拡張競争によって雌雄を決しようとしていた、あの寒い時代に。
これまでのように、曖昧なことを言って言葉を濁しながら有耶無耶にしていた方が楽だったのは間違いないよね。


「国際社会が黙ってないぜ!」の顛末 2020Remix - maukitiの日記
「国際社会が黙ってないぞ!(黙ってないだけ)」と迂遠な感じに有耶無耶にしてきたそれが、いよいよ真面目に正義を大きな声で叫ばざるを得なくなりつつある世界について。
いやあバークが言う世界の真理にまた一歩近づいてしまった。

悪が勝利するために必要なたった一つのことは、善良な人たちが何もしないことである。

自分のことを善良だと信じているはずの私たちが、結果として何もしてこなかった故にこうなっているのは、まぁおそらく間違いない。
自業自得と言うべきか。それとも予測しようのなかった展開だったのか。
どちらにしても、いよいよ曖昧な態度は許されなくなりつつある。
まさにリベラルな『普遍的人権』を信じている私たちのその思想故に。


普遍的人権を諦めるべきか、それともならず者国家や悪の帝国たちとの戦いに臨むべきなのか。
みなさんはいかがお考えでしょうか?