バイデン「逃げるは恥だが役に立つ」

これがバイデン流のアメリカファーストや!



バイデン米大統領、アフガニスタン撤収は「アメリカにとって正しい」 批判は承知と - BBCニュース
ということでアメリカの『僕らの20年間アフガニスタン戦争』が終結したそうで。いやあアレな作品にありがちで、終盤はもう打ち切り確定となりヤケクソで強引なまとめ方ではありましたねえ。概ねイラク戦争の失敗そのまんま――あちらはそれでも後半から建て直しに成功したものの――でちょっと生温かい気持ちになるよね。
もしかして脚本も同じ人が書いたのかな?(同じ人です)
孤立より承認求めるタリバン 中国やロシアはなぜ支援[アフガニスタン情勢]:朝日新聞デジタル
アフガン急変、ポキッと折れた米外交 日本の対応は?[アフガニスタン情勢]:朝日新聞デジタル
The Reasons for the Collapse of Afghan Forces | Center for Strategic and International Studies
まぁこうしたアメリカのアフガニスタン撤退については、これから識者の方たちから色々と面白い話が読めると思われるのでそれを楽しく読めばいいとして、

バイデン氏は、タリバン支配下に置いた首都タリバンの様子に「断腸の思い」だとしながらも、「あと何人、アメリカ人が命を失えばいいのか」、「米軍撤収に適したタイミングなどはない」と述べた。

バイデン氏はさらに、「自分の決定が批判されるのは承知している。しかし、この決定を次のアメリカ大統領に、実に5人目に引き継ぐよりは、自分があらゆる批判を受けた方がいい。これが正しい決定で、これがアメリカの人たちにとって正しい決定だからだ」とも述べた。

バイデン米大統領、アフガニスタン撤収は「アメリカにとって正しい」 批判は承知と - BBCニュース

個人的にはバイデンさんの「アメリカの人たちにとって正しい決定(震え声)」は概ね正しい判断だとは思うんですよね。
戦力や予算の集中という意味でもそうだし、更にはアメリカの民意という意味でも。
アメリカは『正常』に戻るのか? - maukitiの日記
孤立主義へと回帰するアメリカ - maukitiの日記
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アメリカ版『新思考外交』の時代へ - maukitiの日記
以前から何度もアメリカの孤立主義について書いてきた当日記ではありますけども、やはり2021年になってもそのアメリカ世論のトレンドは変わっていないよねえ。まぁむしろ建国時点からそうなんだから、今更変わるはずもないという身も蓋もないオチではあるんですが。
世界の警察なんてやめるべきだし、世界の平和なんてどうでもいい、とぶっちゃけるアメリカの有権者たち。


ただ、そうしたアメリカ世論を身勝手だのなんだのとバカにすることは少なくとも私たち日本人は絶対にできないよね。
国民の約85%が“戦後生まれ” 「8月ジャーナリズム」と揶揄も…戦争番組の存在意義 【ABEMA TIMES】
それこそ毎年のように繰り返されている8月ジャーナリズムだって、『戦争反対』はもちろん良いし、二度と軍国主義のような国家にならないと誓うのも良いものの、結局のところ日本以外の場所からも戦争を失くすという論点にはほとんど触れられないわけでしょう。
自分たち日本が戦争を仕掛けないことと、世界から戦争をなくす(減らす)ことは、一見地続きのようで他者への働きかけという点で実はまったく違う論点なのにね。
そうした矛盾が透けていながら、自国の非戦の覚悟だけを語りながらあたかも世界平和まで追求しているかのように振る舞っているのは、こうした8月ジャーナリズムがもたらした負の側面だと思います。そんな自国第一主義的な身勝手さこそが、8月ジャーナリズムと揶揄される原因じゃないのかと。
それって露悪的に「自分たちさえ平和であればいい」とぶっちゃけるトランプ支持者よりもずっと恥知らずな態度だと思います。
アメリカ国民はそれはまぁ無責任で自分勝手だけれども、私たち日本人だってそれと同じかそれ以上に自分勝手だよね。
それが良いのか悪いのかについては、まぁ各々のポジションや想定する平和の射程にもよるんでしょうけれども。




ともあれ、ここで孤立主義志向な世論に倣って「撤退するアメリカ」を目の当たりにした我々は、自身の生命財産に関わる致命的に重要な問題を改めて考え直すことになる。
つまり、このままアメリカ自国国益を優先させることで一体どこまで逃げ恥することになるのだろうか?
台湾? 
日本?
グアム?
あるいはハワイまで?
――実はこの疑問ってソ連崩壊の端緒となった東欧諸国を見捨てる事に繋がるソ連の『新思考外交』の構図とそのまんまなんですよね。30年経ってソ連と同じ立場に立つアメリカと考えると歴史って面白い。


この疑問を考えるヒントとしては、冷戦時代のような『共産主義という脅威』のような明確な理由があるかどうか、という点に行きつくことになるのでしょう。
おそらく、今回のアフガニスタン撤退と引き換えに『民主主義を守る戦い』を大義名分にした戦いに集中しようとするバイデン新政権の意図はうっすら見えていますけども、はたしてその戦いに挑むことをアメリカ国民にきちんと納得させることができるだろうか?


対テロ戦争のような非対称戦争ではなく、いよいよ大国同士の対称戦争を戦う覚悟を一応は決めつつあるアメリカと、そしてそのアメリカの覚悟の本気さを戦々恐々と見守る同盟国の私たち。
いやあいよいよ世界が面白いことになってしまいつつあります。
絶対に私たち日本も他人事ではないし、なんなら前回同様最前線に立たされるのはほぼ確定なんですけども。


世界が平和でありますように。